私はあまり感じたことがないのですが、世の中には扱いづらい人がいるようです。「扱う」という言葉を使っているので、通常は部下や同僚に対して使う言葉です。上司に対して扱いづらいというのは言葉として不自然です。相手が上司なら扱われるのはあなただからです。では、部下や同僚で扱いづらい人というのはどういう人でしょうか。
扱いづらいとは「扱い」+「づらい」なので、相手に何かを依頼するけど、それが期待するような結果にならないということです。扱いづらい理由は、相手の人間性の問題、相手のスキルの問題、さらに依頼する側の問題が考えられます。
1つ目の相手の人間性の問題としては、気分にムラがあるとか、人の話しを聞かないとか、人に協力するつもりがないとか、そもそもやる気がないとかです。これらは扱いやすいか扱いづらいかという以前に社会人としての問題です。良く言えば個性であり、悪く言えば協調性がないということです。人間性の問題は扱いづらい人とは別で考えた方がいいでしょう。ちなみに、協調性というのは同じ目的を達成するために協力することができる性格のことです。単なる同調とは違います。
2つ目の相手のスキルの問題としては、基本的なコミュニケーションができないとか、課題を論理的に分析できないとか、依頼されたことを遂行するための専門知識がないとか、リーダーシップが発揮できないとかです。これらも扱いやすいか扱いづらいかという以前に仕事をする上での能力の問題です。それは本人の自己研鑽と、会社としての社員の能力開発という問題であり扱いづらいということではありません。能力の問題であれば教育によって改善する可能性もあるので、扱いづらいという曖昧な問題認識で片付けない方が良いです。従って、スキルの問題も扱いづらい人とは別で考えた方がいいでしょう。
上記のように人間性もスキルの問題も依頼した側は相手の特性として依頼前から分かっている(もしくは分かっているべき)ことなので、依頼した側にそもそもの問題があります。相手の人間性やスキルの問題に対して扱いづらい人という表現をすることは問題を曖昧にして、穿ってみれば依頼した側の責任回避する意味合いが見え隠れします。扱いづらいなどと曖昧に言わずに、人間性の問題が顕在化したとか、足りないスキルをどう補うかを話し合うべきです。
3つ目も同様に依頼する側の問題です。依頼する側の問題とは、依頼する側がきちんと依頼内容を伝えられていないか、依頼する側よりも依頼される側の能力が大きく上回っているケースです。どちらも順番に掘り下げてみましょう。
まず、何かを依頼するときは、ゴール(What)、そのゴールを達成する背景や理由(Why)、それをいつまでに(When)、ゴールを達成するための体制やステークホルダー(Who)などを明確に伝えます。どうやって(How to)は伝えてもいいし担当者(依頼を受けた側)に考えてもらってもいいでしょう。これらを伝えることで仕事を定義したことになります。仕事を定義したら、仕事を遂行するために必要な情報(Input)を与えます。これまでの検討資料とか、競合の資料とか、過去に行った類似作業の資料などです。このように仕事を定義して、必要な情報を渡すことが依頼する側の責任です。仕事を定義して、必要な情報を渡しても依頼を受けた側が動けないのだとすれば依頼を受けた側に原因があります。具体的には人間性の問題かスキルの問題が発生しているはずです。人間性の問題へのアドバイスを与えるか、スキルの不足を補うように情報提供するか人員をサポートで付けるかなどの対策が必要です。ただ、現実には依頼する側による仕事の定義が曖昧であることや、必要な情報を提供できていないことが非常に多いと思います。依頼する側が何をすべきか実はよく分かっておらず曖昧で矛盾した指示(What、Whyなど)しか出来ないことはよくあります。部下が優秀なら上司に質問したり、自分で考えて足りないものを補完することもしますが、それを常に期待するのは無茶というものです。ただし、どうやって(How to)は、依頼される側である部下が考えるべきことです。
次に、依頼する側よりも依頼される側の能力が大きく上回っていることも稀にあります。いや、最近だと進歩の早いITなどの専門的な領域では良くあることかもしれません。そのような仕事でも依頼する側は上記のように仕事を定義して、必要な情報を提供すればよいのです。そのとき部下の方が専門性が高いのであれば、話し合って意見を取り入れればいいだけです。何かひとつ依頼すると幾つも意見を言ってくる部下っていますよね。腹を立ててはいけません。細かいこというとか、減らず口とか、生意気だとか、素直に仕事だけやってくれればいいとか思っていませんか?自分が気がつけなかった視点を指摘されるから腹が立つのではないですか?でも、実際はそういう扱いづらい部下の意見のなかに大事な視点が含まれていることは多いです。プライドが邪魔して重要なフィードバックを素直に聞けない人は非常に多いです。経営者にもマネージャーにも多くいます。自分が知らないことを指摘されるのが不安で怖い、プライドが傷つくのでしょう。結局、人の上に立つ人間の器の大きさの問題です。
ちょっと話し変わりますが、よく人材採用するときは自分より優秀な人を選ぶべきといいますが、日頃からイエスマンばかりを身の回りにおいている経営者やマネージャーだと、実際に自分より優秀な部下がいたら困るのではないでしょうか。そういうときに「あいつは優秀だけど扱いづらいなぁ」とか言うのでしょうね。
ちなみに、私は殆ど扱いづらい人というのを感じたことがないのですが、それは上記のような整理をしていることと、そもそも人に何かを依頼するときは「お願いする」という感覚であり、「扱う」という意識ではないからです。それが部下であっても誰でも。
https://11iz.jp/shigotonokachi/
コメント
コメント一覧 (3件)
扱おうとしている感じってどうしても分かっちゃいますよね。
逆に扱うならもう少し上手く扱ってよ〜って思う時もあったりして。
記事にあった”そういうときに「あいつは優秀だけど扱いづらいなぁ」とか言うのでしょうね。”
この言葉聞く事ありますよね。やっぱり姿勢や想いってなんとなく伝わるし、
私が尊敬できる方は扱うではなく、お願いする理由や必要性をきちんとお話ししてくれる印象です。
また”扱いづらいなどと曖昧に言わずに、人間性の問題が顕在化したとか、足りないスキルをどう補うかを話し合うべきです。”を示していただける事は本当に大切だし、中々少ないと思っています。
さらに、負けず嫌いの私にとってはどんどん頑張ってみようという意欲的になっちゃいます。
これから上司になる方には是非心掛けていただきたい。
未来ある部下の芽吹を思いやっていただける方が増えることを願います。
扱いづらい。という言葉は、違和感すら感じます。役割は違えど、相手への敬意がないと思うからです。
そして、依頼が上手くいかない時、下記ができていないことが多いなと思いました。
これを伝えてくれる上司との仕事は、自身のやりがいも感じれる印象です。
“ゴール(What)、そのゴールを達成する背景や理由(Why)、それをいつまでに(When)、ゴールを達成するための体制やステークホルダー(Who)などを明確に伝えます。どうやって(How to)は伝えてもいいし担当者(依頼を受けた側)に考えてもらってもいいでしょう。これらを伝えることで仕事を定義したことになります。仕事を定義したら、仕事を遂行するために必要な情報(Input)を与えます。”
また、上記がないため、会話の中で確認をしていこうとすると、「素直じゃない。言われたことをまずやってほしい。」のような言葉が出てきたりするのを耳にします。
こうなると、部下は壁を作ってしまったり、自分の役割とその点がどうつながり、目指すものを作り上げていけるのかがわからなくなり、自分の頭で考えることをしなくなったりもします。
役割やスキルが違うと、見えている世界も異なるため、理由を伝えたり、話し合ってくださる上司と仕事をしていけることは、成長にもつながっているなと思います。
最後に、
上司も人間なので、部下も上司の依頼背景を想像することは大事なことだなと思います。
さっする。ということを言いたいわけではないです。
[…] 人間性やスキルの違いを「扱いづらい人」で片付けずに考えてみること […]